序章アイキャッチ

序章

ファッション雑誌の多くは、最新のトレンドや着こなし例を紹介し、読者に「今どきのおしゃれ」をわかりやすく伝えることに力を入れてきました。服は主に「商品」として扱われ、教育や市場分析の場でも、売れる仕組みづくりが重視される傾向があります。

しかし、服は単なる「着るもの」ではなく、文化や社会を映し出す鏡でもあります。ロラン・バルトが示したようにファッションは意味をつくる記号であり、ピエール・ブルデューの議論が示すように、階級やライフスタイルを可視化する役割も担ってきました。

欧米ではVogue や Harper’s Bazaar のような商業的なファッション誌であっても、社会的・文化的テーマを記事に取り込み、衣服を通してジェンダーや階級、アイデンティティを読み解く試みが行われてきました。また、研究者や批評的な書き手による専門的な媒体では、ファッションが社会や文化を理解する重要な窓口として扱われてきました。

一方、日本では文化や社会的文脈を意識した雑誌もいくつか存在しましたが、全体としては商業的・実用的な誌面が優勢であり、批評性は相対的に薄かったと言えます。

このサイトでは、文化理論や社会学の視点を取り入れ、マーケティングや流行だけでは見えてこない、ファッションのもうひとつの側面を探ります。衣服を通して社会や文化を読み解く――それが、このサイトの出発点です。

トップへ戻る